旅する医用工学者

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A-aDO2(肺胞気動脈血酸素分圧較差)に関する物質収支の考え方

 A-aDO2(肺胞気動脈血酸素分圧較差)とは

 肺胞から血液への酸素の拡散能が低下すると、肺胞に酸素が届いていても血液に酸素が受け渡されず、全身の酸素需給が悪化する。そこで、肺胞から血液への酸素の拡散能を反映する指標として、肺胞気酸素分圧と動脈血酸素分圧の較差(A-aDO2)を考えてみよう。

 

 まずは単純に

A-aDO2=肺胞気酸素分圧-動脈血酸素分圧

と定義しよう。もちろん、肺胞から血液に酸素が移動できないと肺胞酸素分圧は上昇し、動脈血酸素分圧は低下するため、肺胞から血液への酸素の拡散能が低下すると、A-aDO2は開大する

 

 肺胞における物質収支計算


 さて、A-aDO2を実際に計算してみよう。動脈血酸素分圧は採血すれば簡単にわかるが、肺胞気酸素分圧はそう簡単にはわからない。酸素が肺胞から血管に拡散してしまう(ただし拡散能は低い)ため、肺胞気酸素分圧は吸入気酸素分圧よりも低下してしまうからだ。すなわち、

肺胞気酸素分圧=吸入気酸素分圧-肺胞から毛細血管に移動した酸素量

である。


 そこで、動脈血二酸化炭素分圧(採血すれば簡単にわかる)を利用して推定してみよう。酸素と異なり、二酸化炭素は拡散能が高く、肺胞毛細血管の二酸化炭素分圧と肺胞気の二酸化炭素分圧はほぼ等しく(平衡状態)なっている。また、通常の代謝では、酸素1molの消費に対して、二酸化炭素0.8mol程度が排出されている。生物学では、消費した酸素の物質量に対する排出された二酸化炭素の物質量の比のことを呼吸商(RQ)といい、通常の代謝状態ではRQ≒0.8である。もちろん、呼吸商の定義から、

組織で消費された酸素量=動脈血二酸化炭素量÷呼吸商

である。

 

 ここで、定常状態であれば、組織で消費された酸素量は、肺胞から毛細血管に移動した酸素量と等しいため、

肺胞気酸素分圧=吸入気酸素分圧-肺胞から毛細血管に移動した酸素量

すなわち

肺胞気酸素分圧=吸入気酸素分圧-動脈血二酸化炭素÷呼吸商

であることがわかる。


 あとは、肺胞気酸素分圧がわかればよい。ここで、肺胞気は湿度100%であり、水蒸気で飽和しているため、大気圧(760mmHg)から飽和水蒸気圧(37℃では47mmHg)を引いた分圧が吸入気の空気分圧となる。この値に吸入気酸素濃度FIO2をかけてやれば、吸入気酸素分圧がわかる。
ゆえに、
A-aDO2=(760-47)×FIO2-(PaCO2÷RQ)-PaO2
が示された。

 

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A-aDO2