電流と磁場の公式を丸暗記?!
電流と磁場の公式。似たようなものが多くて、いろいろと混乱する。なんか電流が作る磁場の公式としても、
だか
だかわからなくなってくる。
そもそも、電磁気学に限らず自然科学において公式をひたすら丸暗記するなど愚の骨頂だ。Ampere(アンペール)の法則とBiot-Savart(ビオ・サバール)の法則に立ち返ればよい。とはいっても、これらの法則は積分形で書かれているから理解するのも面倒だ。ここでは、厳密さにはちょっとばかし目をつぶって、対称性を最大限に活用しながら、できるだけ簡単に理解できるように工夫しながら考えてゆこう。
無限長直線電流が作る磁場:円周で対称性を考える
公式丸暗記からの脱却の第一歩として、無限長直線電流を簡単に導出できるように頭を切り替えよう。これはAmpereの法則を用いて導出することにしよう。Ampereの法則とは、ぶっちゃけた言い方をすれば「ある周回経路に沿って磁場を足し合わせれば、その周回経路を貫く電流に等しくなる」ということだ。つまり、
ということだ。周回積分
の領域を電流を中心とする半径rの同心円状にとれば、
であるから、
を得る。そもそも、無限長直線電流が作る磁場は2次元的に対象な筈だから円の周長2πrで割り算していると考えてもよかろう。
円環電流の中心の磁場:球面で対称性を考えてから円周にわたって足し合わせる
さて、続いては円環電流の中心の磁場だ。こちらはBiot-Savartの法則を用いて導出しよう。Biot-Savartの法則とは、電流がそのまわりに磁場を作るとき、その磁場の大きさを表す法則だ。本来ならばベクトルを用いた表記をすべきだが、ここでは簡単に理解してもらうため、
と書いておこう。
なんのことはない、微小長さあたりで考えれば、電流に微小導体の長さをかけた値、すなわち微小電荷と速度の積*1を球の表面積で割っているにすぎない。そう、点とみなせる微小電流は3次元的に対称な筈だから球の表面積4πrで割り算している*2とでも考えておけば覚えやすかろう。つまり、Biot-Savartの法則は実質的にCoulomb(クーロン)の法則に電荷の移動速度を乗じたものなのだ。さて、円環電流がその中心につくる磁場Hを求めたければ、上式をおもむろに積分してやればよい。すなわち、
であることがわかる。ただし、微小経路を足し合わせたものが円周となることから、
であることを用いた。
今回は無限長直線電流が作る磁場と、円環電流が作る磁場を考えたが、対称性を利用すると考えるのが簡単になる。これら以外にも、対称性を利用して考えると覚えやすい公式も多い。電気工学はもちろん、物理学や数学といった自然科学系分野では、対称性を考えるというのは極めて大切なことである。